成瀬映画に登場する風景

『女の座』(1962年) ④ NEW 2019.11.27


映画の前半、映画館の切符売りの仕事に就いている石川家五女・雪子(星由里子)の元へ、
映画を(無料で)見せてもらおうと、嫁ぎ先の九州から上京した姉、三女・路子(淡路恵子)
が訪ねる。
路子「見せて」
雪子「あら、姉さん、また来たの。今日は混んでるわよ」
路子「いいのよ、今日はあたし一人だから」
雪子「お兄さん(路子の夫 橋本正明=三橋達也)は?」
路子「それが、すっかりお父さん(石川金次郎=笠智衆)に気に入られちゃって」

映画の中で10秒くらいの短いシーンだ。
映画館の場所だが、画面写真やインターネット上での検索等によると、
東京・渋谷の「百軒店(ひゃっけんだな)」にあった映画館に間違いないようだ。

ウィキペディア(百軒店)の記述には、テアトル渋谷、テアトルSS、テアトルハイツ
という3つの映画館が隣接していたとのこと。
また、百軒店が舞台となっている作品に本作が記述されている。

管理者は1980年代以降には、この界隈に数軒あったジャズ喫茶やビストロに
何度も行ったことがあるのだが、映画館に行ったことはなく、映画館が
あったことも知らなかった。

参考ページとして、雑誌penのサイトの特集記事の3ページ目に、映画の画面写真と同じ場所のモノクロ写真が掲載されている。


映画館跡の写真=グーグル写真。ハイツは上記の「テアトルハイツ」で。この赤レンガのマンションに建っていたのだろう。


上の写真の逆アングルと地図=グーグル写真

  


画面写真。
(上)通りの向う側の映画館の上映作品ポスターに『我が闘争』と書かれている。
(下)738名と書かれていて、結構大きな映画館だったことがわかる。

豪華オールスターキャストの本作は、出演者の誰もが魅力的だが、
管理者が特に好きなのは、四女・夏子(司葉子)と五女・雪子(星由里子)、
そして少しとぼけた感じの好青年・青山豊(夏木陽介)だ。
特に本作の星由里子はまだ19歳(1943年生まれ)だが、とても19歳には見えない大人っぽい色気がある。
同年の川島雄三監督『箱根山』では、セーラー服姿の女子高生で
この可愛さもグッとくるのだが、個人的には本作の星由里子の方がいい。
翌年の成瀬作品『女の歴史』にも星由里子は出演しているが、
本作から1年後で20歳とは思えない色気(キャバレーホステス役)が倍増していて驚く。
演技力が凄いということかもしれない。
何しろ管理者が6歳の時、最初にスクリーンで映画を観たと記憶している
『モスラ対ゴジラ」(本多猪四郎監督 1964 東宝)のヒロインで
それ以来のファンなので思い入れは強い。

年に1回行われている成瀬監督の会で、この3人の方が参加された
年があり、その時に本作の話も親しくお話しさせていただいた。




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